2011年5月 レバノン杉

2009年8月 レバノンのブシャッレにて

(2009年8月 レバノンのブシャッレにて) 

レバノン杉は、レバノンの象徴として国旗に使われています。紀元前の時代から、その存在はフェニキア人の船の材料として、イランのペルセポリス神殿をはじめ各地の大神殿の屋根材として、広く知られていました。樹の寿命も数百年と長く、大きいものは樹高40メートルにも及ぶそうです。杉といいながらもマツ科に属し、松ぼっくりもできます。

よく知られているとおり、レバノン杉は建材として非常に優れていたため、古代から乱伐が進み、現在レバノンではほとんど目にすることができません。北部のブシャッレ地方、レバノン山脈中のカディーシャ渓谷(標高約2000メートル)で、保護樹林として細々と生きているだけです。さすがに40メートルもの樹高はなく、せいぜい10-20メートルほどですが、その太い幹や枝と、横に広がるどっしりとした立ち姿は、畏敬の念をおぼえさせます。

レバノン杉は旧約聖書にも頻出します。たとえば、『詩編』から引用してみましょう。

主の御声は水の上に響く。
栄光の神の雷鳴はとどろく。
主は大水の上にいます。
主の御声は力をもって響き
主の御声は輝きをもって響く。
主の御声は杉の木を砕き
主はレバノンの杉の木を砕き
レバノンを子牛のように
シルヨンを野牛の子のように躍(おど)らせる。
(詩編29. 3-6、日本聖書協会『聖書』新共同訳より)

2008年5月 レバノン南東部ラーシャイヤーからヘルモン山を望む

(2008年5月 レバノン南東部ラーシャイヤーからヘルモン山を望む)  

地中海というと内海で大荒れしないイメージがありますが、冬の雨期には嵐に見舞われることも稀ではありません。レバノンでは晩秋から春にかけてしばしば大きな雷が鳴ります。レバノン杉に落雷して樹が砕けることもあったのでしょう。ここで「躍らせる」ところの「レバノン」は「レバノン山脈」の山で、「シルヨンSiryon」はレバノン南部のシリアとの国境にある「ヘルモン山」のことです。現在の「シリアSyria」の語源はこの「シルヨン」にあるので、国際政治の諸々の荒波や最近の「アラブ革命」の大きなうねりがレバノン、シリアの両国を子牛のように躍らせている、と比喩的に読めないでもありません。そういえば、2005年2月のラフィーク・ハリーリー元首相暗殺事件をうけて、4月にレバノンの反シリア派の人々が大規模な集会を繰り返し、内戦後も駐留を続けていたシリア軍を撤退させましたが、欧米諸国はこの動きを「レバノン杉革命Cedar Revolution」と呼んで称揚しました。

さて、次のレバノン杉の写真はどこのものでしょう。

2011年2月

(2011年2月)  

新宿御苑です。池に映るその美しい姿、レバノンではちょっとお目にかかれない構図です。

(黒木 英充)

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