2010年11月

レバノン週報(2010年12月6日〜12日)

先週に行われたS・ハリーリー首相のイラン、フランス訪問により、レバノンの国内情勢、特にラフィーク・ハリーリー爆殺事件調査を巡る国内対立に何らかの変化が生じるかと期待されたが、対立解消に向けた具体的な動きは生じることなく、また先月10日以来開催されていない閣議の再開も実現されることなく、一週間が終わってしまった。7日の報道では、同爆殺事件を取り扱っているレバノン特別法廷が今後数週間以内に、起訴状を予審判事に提出するとのことであり、国内対立の解消に向けて取り組める時間は、残り少なくなってきているようである。

こうした中で、ラフィーク・ハリーリー爆殺事件に対するメンバーの関与に関して、最近頻繁に言及されているヒズブッラーは12月8日、ラアド議員の声明を通じて改めて、レバノン特別法廷の信用性を疑う内容の声明(同組織を追い詰めるために、米国とイスラエルは同法廷を共謀して利用)を発出した。しかしながら、ラアドは他方、ヒズブッラーの「後ろ盾」であるシリアと、同法廷との協力を主張しているサァド・ハリーリー首相率いる「未来潮流」勢力の「後ろ盾」であるサウジアラビアによる、レバノンの対立状況解消を目指した動き(「サウジ・シリア・イニシアティブ」)に対する支持をも表明した。シリアのバッシャール・アサド大統領は9日に、パリでサルコジ大統領らと会談した際、レバノン情勢の安定化に向けてサウジアラビアと協力していく意向であることを表明したことから、同イニシアティブを反映した何らかの動きが、レバノンにおいて生じることが期待されている。

レバノン週報(2010年12月13日〜19日)

11月上旬に赴任以来、ベイルートは異様に暖かい天候であったが、先週末から急速に冷え込み、強風を伴う猛烈な雨模様となった。山間部では雪がかなり降り積もり、道路の閉鎖といった状況も生じたが、宗教指導者による「雨乞い」まで行われた深刻な水不足の懸念には、一先ず安堵をもたらした結果となった。

さて、レバノン閣議は先月の10日以来、ラフィーク・ハリーリー爆殺事件調査を巡る国内対立から開催されていないが、スライマーン大統領やラフィーク・ハリーリー首相らは週明けの12月13日から、閣議を再開すべく相対立する政治勢力との対話を積み重ねた。とりわけ、同事件にシリアが関与したと当初は証言しておきながら、後にその証言を取り消した「偽証者」の問題を閣議で取り上げるように、ヒズブッラー側が要求していることに対して、サァド・ハリーリー首相率いる「未来潮流」勢力側が反対していることが、内閣を機能麻痺に陥らせてきたのであるが、15日にようやく再開された閣議において、この問題に関する議論の先送りをスライマーン大統領は決定した。国内の政治対立に自らの手で決着出来ない状況が続いているが、他方でサウジアラビアとシリア主導の対立解消に向けた動き(「サウジ・シリア・イニシアティブ」)に関しては、具体的な中身が明らかになっていない状況が続いている。

レバノン週報(2010年12月20日〜26日)

レバノンでは依然として、ラフィーク・ハリーリー爆殺事件調査を巡る政治対立が続いている。同爆殺事件を取り扱うレバノン特別法廷を支持する「未来潮流」勢力の「後ろ盾」であるサウジアラビアと、同法廷は米国とイスラエルが、ヒズブッラーを追い詰めるために共謀して利用していると主張する同組織の「後ろ盾」シリアによる、レバノン国内の対立解消に向けた動き(「サウジ・シリア・イニシアティブ」)は水面下でなされている状況である。こうした中、同法廷からの起訴状発出に伴う情勢の更なる悪化を懸念する声が、レバノン人の間で高まっているが、スライマーン大統領は12月25日、国民を安心させるためにも、起訴状発出前の対立解消は可能、との声明を出すに至った。

この背景には、米国の病院で手術を受けていたサウジアラビアのアブダッラー国王が12月21日に退院したことにより、サウジ・シリア・イニシアティブに弾みがつくとの期待が存在している。他方でイランのハーメネイー最高指導者は20日、カタルのハマド首長との会談において、レバノン特別法廷の正当性を一蹴する発言を行った。未来潮流を率いるサァド・ハリーリー首相は、サウジ・シリア・イニシアティブがハーメネイー発言によって妨害されることはない、との声明を翌21日に発出したが、クリスマス後の来週の展開はどのようになるであろうか。当オフィス前のマロン派教会の庭には、大きなクリスマスツリーが用意され、夜になるとネオンがきれいである。

レバノン週報(2010年12月27日〜2011年1月2日)

クリスマス明けから始まり、新年を迎えた今週であったが、ラフィーク・ハリーリー爆殺事件調査を巡る国内の政治対立には、何ら目立った動きは生じなかった。同対立の解消を目指したサウジアラビアとシリアの動き(「サウジ・シリア・イニシアティブ」に関しても、活発化しているとの報道はなされているものの、具体的にどのような駆け引きがなされているのか、皆目見当がつかない状況である。ヒズブッラーと政治的な同盟関係にある政治組織「アマル運動」を率いるビッリー国会議長は12月30日、来月は決定的な月になる、との声明を出したが、さてどのような展開が待っているであろうか。

レバノンで初めて年末年始を迎えたが、大晦日の夜はレストランによっては賑わいを見せていたが、早くに閉まる店もあり、夕食の確保には少々苦労した。元旦の朝はさすがに閑散としていたが、靴磨きのおじさんも営業しており、またいつものバスも本数は少ないながら走っていたので、オフィスまで行ってきた。昔滞在していたイギリスと異なり、クリスマスや元旦もそれなりに機能するので、外国人滞在者には助かるところである。

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